私は昔から、本を読むのがあまり速い方ではありません。
頭の中に情景や意味がしっかり浮かぶまで、同じ数行を何度も読み返すことがあります。
また、読み進めるうちに心に浮かんだ疑問を考え始め、その答えを探しているうちに、いつの間にか時間が過ぎてしまうこともあります。
そのため、若い頃は国語の試験や研究資料を読み込む際に、随分と苦労しました。
速読ができる人をうらやましく感じたことも少なくありません。
しかし最近では、本を「知識を得るため」だけではなく、「味わうため」に読むようになりました。
ゆっくり読むことで、一つの言葉や表現が心に深く染み込んできます。
急いでページをめくるよりも、立ち止まりながら読む時間そのものに、豊かさがあるように思えるのです。
そう考えていると、私が楽しんでいるトレイルランニングのことを思い出します。
トレイルランニングでは、山道を登り下りする速さは、一般的な登山者の2〜3倍にもなります。
その分、景色や地形、草木の香り、空気の変化をゆっくり味わう余裕は少なくなります。
もしかすると私たちは、「速く進むこと」を求めるあまり、本来そこにある味わいを置き去りにしているのかもしれません。
それでも今の私は、まだ速さを追い求めてしまいます。
けれど、いつか思うように速く走れなくなった時、今度はゆっくりと歩きながら、山そのものを深く味わう喜びへと戻っていくのかもしれません。
速さには速さの魅力があり、ゆっくりには、ゆっくりにしか見えない景色がある。
そんなことに、ふと気づきました。

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