仁泉堂医院

他人のために尽くすときに忘れてはいけないこと

「子どものために」「家族のために」「困っている人のために」――そう思うと、人は驚くほどの力を発揮します。子どもの弁当を作るために早起きしたり、職場で身を粉にして働いたり、そうした姿は一見美談として語られます。けれども、その一方で、自分の食事...
仁泉堂医院

助言をどう受け取るか

診療の場で、行動の改善点をお伝えするとき、しばしば次のような反応があります。「それはできません」と、行動を回避する「自分は悪くない」と、正当性を主張する運動や栄養の指導をしても、一度試しただけで「効果がなかった」と結論づける指示通りにやった...
人間・社会

山と人間関係 ― 立ちはだかるものをどう捉えるか

トレイルランニングをしていると、思いがけない障害に出会います。急な登りに息が上がり、倒木の根っこに足を取られ、岩に爪先をぶつけ、転んでしまうこともある。自然の中では、順調に進ませてもらえることの方が少ないのです。では、人生で出会う人々はどう...
日常

上州武尊山スカイビュートレイル記録③ ~人は自然の脅威に立ち向かうために手を組む ~

夜の山道に入ると、雰囲気は一変しました。17時を過ぎると辺りは急に暗くなり、靄が濃く立ちこめてきます。ヘッドライトを強くすると光が乱反射して真っ白になり、視界が奪われました。立ち止まって耳を澄ませても、風の音と自分の呼吸しか聞こえません。正...
日常

上州武尊山スカイビュートレイル記録② ~ 避けようとする一歩が、危うさを呼ぶ ~

レース中、ぬかるみを避けようとして崖側に足を出した瞬間、滑って落ちそうになりました。なんとか踏みとどまりましたが、あの一歩は危険そのものでした。靴が濡れるのが嫌で避けたのですが、結果的にそちらの方が命取りになりかねませんでした。結局、靴が泥...
日常

上州武尊山スカイビュートレイル記録① ~ 長い道のりも、一歩一歩の積み重ね ~

上州武尊山スカイビュートレイル80Kを完走しました。80kmのトレイルレースを走ると、歩数にするとおよそ10万歩になります。数字で見ると気が遠くなりますが、結局は一歩ずつ進むしかありません。途中にはきつい登りや、転倒や捻挫といったトラブルも...
仁泉堂医院

都合の良い情報だけを信じていませんか?

診察をしていると、患者さんがインターネットで得た情報を持って来られる場面によく出会います。今は、賛否両論や相反する研究報告に誰でもアクセスできる時代です。それ自体はとても良いことなのですが、注意が必要だと感じることもあります。というのも、人...
日常

子どもの頃の「残り掃除」の思い出から

私が小学生だった頃、昼休みに「掃除の時間」がありました。教室や家庭科室、廊下など、班ごとに持ち場が割り当てられていたのです。ある日、私の班が担当したのは校庭の掃除でした。同じ班の少年と、ゴミ拾い用のトングを竹刀に見立ててチャンバラを始めてし...
日常

レース前の長時間トレーニング

週末は、Sky View Trailに向けて「長時間の活動に身体を慣らす」ことをテーマに過ごしました。ウォーキング3時間、ランニング2時間。計5時間の動きでしたが、大きな痛みや不調なく終えることができました。ここから本番までの4日間は、疲労...
森田療法

第42回森田療法学会での発表のお知らせ

来る 10月4日、第42回森田療法学会 で発表することになりました。今回の開催地は札幌です。北海道は意外にも森田療法が盛んな地域であり、これからの森田療法を担う田所先生が大会長を務め、「症状を取ろう取ろうは、徒労です」で知られる芹澤先生、ユ...
仁泉堂医院

他人のために尽くすときに忘れてはいけないこと

「子どものために」「家族のために」「困っている人のために」――そう思うと、人は驚くほどの力を発揮します。子どもの弁当を作るために早起きしたり、職場で身を粉にして働いたり、そうした姿は一見美談として語られます。けれども、その一方で、自分の食事...
仁泉堂医院

助言をどう受け取るか

診療の場で、行動の改善点をお伝えするとき、しばしば次のような反応があります。「それはできません」と、行動を回避する「自分は悪くない」と、正当性を主張する運動や栄養の指導をしても、一度試しただけで「効果がなかった」と結論づける指示通りにやった...
日常

子どもの頃の「残り掃除」の思い出から

私が小学生だった頃、昼休みに「掃除の時間」がありました。教室や家庭科室、廊下など、班ごとに持ち場が割り当てられていたのです。ある日、私の班が担当したのは校庭の掃除でした。同じ班の少年と、ゴミ拾い用のトングを竹刀に見立ててチャンバラを始めてし...
森田療法

第42回森田療法学会での発表のお知らせ

来る 10月4日、第42回森田療法学会 で発表することになりました。今回の開催地は札幌です。北海道は意外にも森田療法が盛んな地域であり、これからの森田療法を担う田所先生が大会長を務め、「症状を取ろう取ろうは、徒労です」で知られる芹澤先生、ユ...
森田療法

やめたとは言わない正直さ

「2ヶ月間、タバコを吸っていません。でも、やめたとは言いません。」診察の中で、ある方がそう語ってくれました。「やめた」と言ってしまえば、一生吸わないと未来を約束することになります。しかし未来のことは、誰にも保証できません。だからこそ、この方...
仁泉堂医院

言い訳はなぜしない方が良いか?

私たちは誰しも、うまくいかなかったときに「でも」「だって」と言い訳をしたくなるものです。失敗や不安を、少しでも軽く見せたい、責任を外に置きたい――そんな心の働きは自然な防衛反応といえます。しかし、森田療法の創始者・森田正馬は、この「言い訳」...
森田療法

「べき思考」を超える――ランニングが教えてくれる森田療法の実践

森田療法では、人の苦悩を深める要因の一つとして「べき思考(〜すべきだ、〜でなければならない)」が指摘されています。頭の中で「どうすれば正しいのか」を追い求めるほど、矛盾にぶつかり、ますます身動きが取れなくなってしまうのです。この「べき思考」...
人間・社会

自分の課題と不安を引き受けるということ

私たちは日常の中で、家族や友人、さらにはニュースやSNSで話題になる著名人の出来事にまで関心を寄せることがあります。それ自体は自然なことですが、気づかないうちに「自分の課題」や「自分の不安」から目をそらし、他人の問題ばかりに意識を向けてしま...
森田療法

弱さと歩む、あるがままの生き方

ときどき患者さんから「先生は心が強いですね」と言われます。正直なところ、私は自分が特別に強いと思ったことはありません。強い部分もあれば、弱い部分もある。…それはきっと、誰にでもあることだと思います。だから、「私は弱いから、強い人に助けてもら...
森田療法

マニュアルよりも、体得を大切に

最近、森田療法学会の中で、外来森田療法をマニュアル化しようという取り組みがあるようです。それ自体が悪いことだとは思いませんが、少しだけ気になることがあります。それは、マニュアルに従うこと自体が目的になってしまい、肝心の森田療法の本質が見えに...
人間・社会

山と人間関係 ― 立ちはだかるものをどう捉えるか

トレイルランニングをしていると、思いがけない障害に出会います。急な登りに息が上がり、倒木の根っこに足を取られ、岩に爪先をぶつけ、転んでしまうこともある。自然の中では、順調に進ませてもらえることの方が少ないのです。では、人生で出会う人々はどう...
日常

上州武尊山スカイビュートレイル記録③ ~人は自然の脅威に立ち向かうために手を組む ~

夜の山道に入ると、雰囲気は一変しました。17時を過ぎると辺りは急に暗くなり、靄が濃く立ちこめてきます。ヘッドライトを強くすると光が乱反射して真っ白になり、視界が奪われました。立ち止まって耳を澄ませても、風の音と自分の呼吸しか聞こえません。正...
日常

上州武尊山スカイビュートレイル記録② ~ 避けようとする一歩が、危うさを呼ぶ ~

レース中、ぬかるみを避けようとして崖側に足を出した瞬間、滑って落ちそうになりました。なんとか踏みとどまりましたが、あの一歩は危険そのものでした。靴が濡れるのが嫌で避けたのですが、結果的にそちらの方が命取りになりかねませんでした。結局、靴が泥...
日常

上州武尊山スカイビュートレイル記録① ~ 長い道のりも、一歩一歩の積み重ね ~

上州武尊山スカイビュートレイル80Kを完走しました。80kmのトレイルレースを走ると、歩数にするとおよそ10万歩になります。数字で見ると気が遠くなりますが、結局は一歩ずつ進むしかありません。途中にはきつい登りや、転倒や捻挫といったトラブルも...
仁泉堂医院

シューズと人間の力

ランニングをする時、みなさんはどのようなシューズを選ぶでしょうか。クッション性が高く衝撃をしっかり吸収してくれるタイプもあれば、サポートを最小限にとどめ、足裏に路面の感覚をそのまま伝えてくれるタイプもあります。私は後者、つまりクッションの少...
人間・社会

赤城山トレイル試走記|現実を知り、挑戦する走りへ

試走の目的は「守り」ではなく「攻める」ため先日、トレイルランニングの練習チームの仲間と一緒に、4人で赤城山トレイルランニングレース(32km)の試走を行いました。試走の最大の目的は、「リスクを避ける」ためだけではありません。リスクを最小限に...
森田療法

「あるがままを生きる」とは?──mindではなく、soulに近づく生き方

「自分らしく生きたい」「もっと自然に生きたい」——そんな思いを抱く人は多いと思います。けれど、それを実現するのは簡単ではありません。なぜなら、私たちは日々の暮らしの中で、知らず知らずのうちに「こうあるべきだ」「こうすれば人に認められる」とい...
ダイエット

「壊して、つくる」──身体は分子レベルで日々、生まれ変わっている

私たちの身体は、毎日少しずつ壊れ、そして新しく作り直されています。この営みは「新陳代謝」と呼ばれ、筋肉や骨、皮膚、血液などの組織では、細胞レベルでの世代交代も行われています。けれども、すべての組織で細胞が入れ替わるわけではありません。たとえ...
人間・社会

「動物園の動物」と「野生の動物」──神経症との意外な関係

私は時折、動物園で暮らす動物たちを眺めながら、「この子たちは幸せなんだろうか?」と、思うことがあります。餌ももらえる、天敵にも襲われない、医療も整っている。それでも、彼らの目がどこか遠くを見つめているように感じるのは、私だけでしょうか。■ ...
森田療法

我選ぶ、ゆえに我あり──「私」を取り戻す選択の力

哲学者デカルトは、「我思う、ゆえに我あり(Cogito ergo sum)」という言葉を残しました。「考えている私の存在は否定し得ない」――思考によって自我を証明するこの言葉は、とても有名です。ですが私は、森田療法を土台としながら自然適応療...
日常

レース前の長時間トレーニング

週末は、Sky View Trailに向けて「長時間の活動に身体を慣らす」ことをテーマに過ごしました。ウォーキング3時間、ランニング2時間。計5時間の動きでしたが、大きな痛みや不調なく終えることができました。ここから本番までの4日間は、疲労...
仁泉堂医院

シューズと人間の力

ランニングをする時、みなさんはどのようなシューズを選ぶでしょうか。クッション性が高く衝撃をしっかり吸収してくれるタイプもあれば、サポートを最小限にとどめ、足裏に路面の感覚をそのまま伝えてくれるタイプもあります。私は後者、つまりクッションの少...
運動

無理がきく身体で、無理なく走る

ランニングを趣味にしている方なら、一度は「VO₂max」「AT値」「ランニングエコノミー」といった言葉を耳にしたことがあるかもしれません。専門的には、マラソンなど長距離を速く走るための体力や効率を示す指標ですが、ここでは難しい説明はしません...
森田療法

「ひっぱってもらう」ということ 〜ランニングと森田療法に通じる力の引き出し方〜

最近、トレイルランニングチームでの練習に参加しています。学生時代はラグビーに打ち込んでいましたが、陸上競技の経験はありません。そんな私にとって、ランニングは未知の世界であり、毎回が新しい挑戦です。「ひっぱってもらう」と出せる力がある陸上の練...
ダイエット

「自分のカラダ」と向き合う——独自の工夫と科学のバランス

トレイルランニングの仲間と話していると、食事や栄養にあまり気を配らなくても、驚くほど引き締まった体を維持している人がいます。体脂肪率も低く、パフォーマンスも安定している。そんな姿を見ると、「あれ?自分は何をそんなに気にしているんだろう」と、...
森田療法

障害物があるのが普通、それが人生のデフォルト

最近、人と話していると、「ストレスが多くて疲れる」「こんなにうまくいかないなんて…」といった言葉をよく耳にします。そんなとき、「そもそも、人生には障害物がないのが普通」だと思っている方が意外と多いのかもしれないと感じることがあります。けれど...
日常

暑熱馴化は必要ですが、やりすぎ注意!

暑熱馴化(しょねつじゅんか)とは?暑さに慣れるために、計画的に暑い環境で運動を行い、発汗が早くなる体温が上がりにくくなる電解質を効率よく保てるといった体の適応反応を促すプロセスです。夏場のトレーニングやレースを安全に乗り切るために、とても大...
仁泉堂医院

心のトレーニングにも「チーム分け」があるとしたら?

毎週、私はランニングの練習会に参加しています。自分のその日の体力や調子に合わせてチームが分かれていて、それぞれ決められたペースで走るスタイルです。A〜Cのチームに分かれ、ペース走やビルドアップ、インターバルなどのメニューをこなしていきます。...
日常

ツツジ咲く赤城山で感じた、もうひとつの爽快感

週末は、赤城山でハイキングをしてきました。歩いたルートは、長七郎山、地蔵岳、鈴ヶ岳、出張山、薬師岳、陣笠山をめぐる約16kmのトレイル。赤城らしい起伏に富んだ道のりを、普段より時間をかけつつも、しっかりと歩きました。ちょうどツツジが咲き始め...
運動

走れるだけじゃ足りなかった!?ラグビーで気づいた体の使い方

週末、久しぶりにラグビーの試合に出場しました。といっても一年に数回だけ結成される、医学部ラグビー部のOBチームの一員として、7人制ラグビー、いわゆる「セブンズ」の大会に参加したのです。メンバーは26歳から58歳まで。年齢の幅はまるで三世代に...
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