私たちは、生きていく中で、さまざまな「ラベル」を身につけます。
私はこれまで、精神科医、父親、夫、親にとっての子ども……。そんな多くのラベルを持ちながら生きてきました。
ラベルは、自分がどこに属しているのかを教えてくれます。社会の中で役割を与え、自信や責任感にもつながります。
一方で、そのラベルに縛られることもあります。
「父親なのだから、子どもの将来に責任を持たなければならない。」
「精神科医なのだから、診療で感じるつらさや不快感も受け入れるべきだ。」
そんなふうに、自分で自分を縛っていた時期がありました。
今振り返ると、数年前の私は、それぞれのラベルに合わせようとしすぎていたように思います。
森田療法を学び、実践する中で、少しずつ変わってきました。
責任を放り出すのではなく、必要な責任を引き受ける。
嫌なことを我慢し続けるのではなく、必要な不快感は受け入れながら、変えられることは行動によって変えていく。
そんな「ほどよい責任感」と「ほどよい受容」に近づいてきたように感じています。
だからといって、ラベルを全部捨てる必要はありません。
それらは長い年月をかけて、自分が育ててきた大切な役割でもあります。
必要な場面では使い、必要のない場面では少し忘れる。そのくらいの距離感で付き合えばよいのではないでしょうか。
私自身の変化も、考え方だけで起きたわけではありません。
トレイルランニングを始め、チームに参加しました。そこで「チームの一員」という新しいラベルを手に入れました。
仕事では、仁泉堂を薬も診断書も出さない、外来森田療法専門クリニックへと大きく方向転換しました。
実際に行動すれば、新しく得られるものがあります。同時に、手放すものもあります。
決して楽な道ではありません。
それでも、自分で選び、行動してきたという実感があります。
そのおかげで、ラベルに人生を支配されるのではなく、ラベルを一つの道具として使いながら、自分の人生を歩んでいる感覚が以前より強くなりました。
森田療法は、「自分とは何か」を考え続ける療法というより、「どう生きるか」を行動の中で確かめていく療法です。
ラベルは必要です。
しかし、人生の主人公はラベルではありません。
行動している、今この瞬間のあなた自身なのだと思います。

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