文学・芸術

仁泉堂医院

百人一首に学ぶ、感情を語る言葉の豊かさ

私が中学生の頃、国語の授業で百人一首を学びました。高校時代には校内のかるた大会で準優勝したこともあり、百人一首は私にとって身近な存在です。今では数首しか暗記していませんが、先日、患者さんのお子さんがかるた部に所属しているという話をきっかけに...
文学・芸術

(短編)声をかけなかった旅人

ある森に、鳥たちの一族が暮らしていました。高い木々の間を自由に飛び回り、風を読み、空を渡ることを誇りとして生きていました。その一族の中で、一人だけ、羽を持たない人間の子どもが育てられていました。その子は、鳥たちに大切にされていました。食べ物...
文学・芸術

(短編)終わらない食卓

私は、眠っているあいだにどこかへ連れてこられたらしい。それ以前の記憶は、霧がかかったように曖昧で、ほとんど思い出せない。気がつくと、見知らぬ部屋の中にいた。白い壁、窓のない静かな空間。そして、正面の壁に一枚の紙が貼られている。「テーブルの上...
文学・芸術

なくてもいい、けれど

かつての私は、「精神科医っている意味あるの?」「森田療法なんて、もう古いでしょう」そんな言葉に触れるたび、胸の奥で静かに怒りを押しとどめながら、その存在意義を語ろうとしていた。けれど今、同じ言葉を聞いても、以前のような波は立たない。精神科医...
文学・芸術

「やりすぎない」という知恵 ―『鋼の錬金術師』を読んで

鋼の錬金術師は、荒川弘による作品です。きっかけは、娘がアニメの期間限定無料配信を食事中にも見ていたことでした。横で流れている物語を断片的に追っているうちに、次第に「この先はどうなるのか」と気になるようになり、気づけば私自身も引き込まれていま...
文学・芸術

刹那

私は宇宙に浮かぶ ひとつの泡現れ 消える わずかな間いなくなっても何も変わらず世界は そのまま 続いてくそれでも私にとっての私 それはかけがえのない ただひとつこの息も この揺れも誰にも渡せない そうこの中で 起きている「大切だ」と言われて...
文学・芸術

本が私を呼んでいた日 ー 水木しげると「自然に任せる」ということ

先週の金曜日、私は高崎駅の構内に立っていました。14時14分発、湘南新宿ライン特別快速小田原行き。発車まであと12分。新宿まで約2時間。「何か本でも読もうか」そう思い、足は自然とくまざわ書店へ向かいました。滞在できるのはせいぜい5〜6分。直...
文学・芸術

「あるがままとするほかない」態度 — 鬼太郎と森田療法

水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』で、鬼太郎は幽霊族の末裔として、この世とあの世、人間と妖怪のあいだを行き来する存在として描かれています。物語の中で、人間は自分たちに都合のよい振る舞いを重ね、妖怪の世界に踏み込み、やがてしっぺ返しを受けます。妖...
文学・芸術

ある朝、“BELOVED”を聴いて涙が出た理由

火曜の朝、出勤前に、私はある一小節を口ずさんでいました。曲名も、ミュージシャンもわからない。ただ、そのフレーズだけが浮かんできたのです。気になって歌詞を検索すると、GLAYの「BELOVED」でした。出勤前のわずかな時間、YouTubeで全...
人間・社会

人生の前半と後半で、世界の扱い方は変わる

若い頃の私は、圧倒的に概念の世界にいました。小説よりも論説文や科学書、絵画よりも地図帳やデータ集のほうが好きでした。読めば「わかった気になる」し、見れば「把握した気になる」。そこに安心感と手応えがあったのです。けれども、年齢とともに少しずつ...
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