20年以上の臨床経験の中で、患者さんから「病気か怠けか?」と尋ねられることは、決して珍しくありません。
経験の浅かった頃の私は、「〇〇症の症状です。怠けではありません」と答えていました。
当時は、それが患者さんの苦しさを和らげる答えだと思っていたのでしょう。しかし、今振り返ると、もう少し深く考える必要があったように思います。
この答え方には、「病気でなければ怠け者である」という二者択一の考え方と、「怠けることは悪いことだ」という善悪の判断が前提になっています。
けれども、本当にそうでしょうか。
病気であってもなくても、怠けたいときはあります。いつも意欲的に活動できるわけではありませんし、ときには何もせずに過ごしたくなることもあるでしょう。そうした時間があること自体、必ずしも悪いことではありません。
むしろ、「怠けてはいけない」「怠ける自分はダメな人間だ」と考えることが、かえって自分を苦しめている場合もあります。
「病気か怠けか」という問いは、一見すると、自分の状態を理解するための問いのように見えます。しかし、その背景に「病気なら仕方がないけれど、怠けなら許されない」という考えがあるとしたら、どうでしょうか。
病気であることを証明できなければ、自分を許せない。休みたくても、休む理由を探さなければならない。そんな窮屈さが、心の不調をさらに深めてしまうこともあるのではないでしょうか。
もし今、患者さんから同じ質問をされたら、私はこんなふうに答えるかもしれません。
「私は、けっこう怠けますが、あなたは怠けませんか?」
もちろん、怠けすぎれば、周囲からの信用を失ったり、自分にとって不利益が生じたりすることもあります。何事もほどほどが大切です。
ただ、怠けることをすべて悪いものとして扱う必要はないと思うのです。
大切なのは、自分が病気なのか怠け者なのかを決着させることよりも、今、自分がどのような状態にあり、目の前で何ができるのかを考えることではないでしょうか。
「病気か怠けか」という二者択一の問いから、少し距離を取ってみる。
どちらかに決めつけなくても、目の前の生活は続いていきます。そのときどきの自分の状態を認めながら、できることをしていく。
そんな、もう少し幅のある考え方があってもよいのではないかと思います。

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