時々、「子どもの不登校や生活態度について相談したい」と、親御さんからご連絡をいただくことがあります。
仁泉堂医院では、心の問題に取り組むことを、いわば「メンタルトレーニング」の場として捉えています。
そのため、基本的には、患者さん自身が治療を受ける意思をもち、自分で選択した行動について、自分なりに引き受けていくことを大切にしています。
自分で行動を選ぶことができ、その結果を自分のこととして扱うことができることを前提としているため、当院では原則として18歳以上を対象としています。
そのため、お子さんのことで相談したいと思って連絡をくださった親御さんが、「子どもが受診できないのであれば……」と、相談をあきらめてしまうことがあります。
けれども、実は別の方法があります。
子どものことで悩んでいる親御さん自身の問題として、治療に取り組んでみる。
それが、結果として子どもの行動の変化につながることがあります。
「この子が問題」という見方から
私は2014年から約10年間、家族療法を学び、臨床の中で経験してきました。
家族療法では、「この子が問題だ」という状況に出会ったとき、その問題を単純に「子どもの問題」とは考えません。
もちろん、子ども自身に困っていることがある場合もあります。
しかし、その問題をめぐって、親が心配し、子どもがそれに反応し、親がさらに心配する。そこに学校やきょうだい、祖父母などが関わることもあります。
このように、ある問題をめぐって人と人との関係が組み合わさり、「問題が維持されるシステム」ができていると考えるのです。
家族療法の初期には、このような問題に関わるできるだけ多くの人に集まってもらい、家族全体を対象として面接を行うことがありました。
しかし、多くの人が一つの場所に集まることは、それだけでも大変なことです。
また、家族の中で起こっていることを面接の場で丁寧に捉えていくためには、ある程度経験を積んだ複数の治療者によるチームが必要になる場合もあります。
そのため、こうした方法をそのまま一般の診療や保険診療の中で行うことには、難しさがあります。
一人の面接から、家族全体に変化が生じることもある
一方で、家族全員が治療の場に来なくても、変化が起こることがあります。
個人面接であっても、その人だけを切り離して見るのではなく、その人が家族の中でどのような関係をつくり、どのような影響を受け、また周囲にどのような影響を与えているのか。
そうした背景にある「問題のシステム」を感じながら面接を進めていく。
すると、面接に参加していない家族にも、変化が表れることがあります。
これは、決して「子どもの問題は親の問題だ」と言っているわけではありません。
むしろ、
「子どもの問題」と見えているものの中に、自分自身も関わっているのかもしれない。
そう気づくことが、一つの出発点になるということです。
「自分の問題ではない」と思っている方へ
たとえば、お子さんが学校に行かない。
朝になると親子で言い争いになる。
何度言っても生活習慣が変わらない。
そんな状況に、「この子が変わらなければ、どうにもならない」と感じている親御さんもいるかもしれません。
もちろん、子どもには子どもの事情があります。
親が変われば、すべてが解決するわけでもありません。
それでも、「これは子どもの問題だから、自分には何もできない」と考えるのではなく、
「一見すると子どもの問題に見えるけれど、自分もこの問題をめぐる関係の一員なのかもしれない」
と考えてみる。
もし、そんなふうに感じることができたなら、まず親御さん自身が仁泉堂医院を受診するという方法があります。
私は外来森田療法を専門としていますが、目の前に現れている「問題」を、その人だけの問題として切り取って見るのではなく、その人を取り巻く人間関係や生活の中にあるものとして捉えるようにしています。
そのため、当院で外来森田療法を終えた方の中には、その方自身が自分らしく生活できるようになるだけでなく、結果として、配偶者や子どもとの関係にも変化が生じ、家族それぞれが以前より自然に、のびのびと生活できるようになっている方もいます。
もちろん、そうなることを最初から目標にするわけではありません。
まずは、治療を受ける本人が、自分自身の生活に取り組んでいく。
その変化が、思いがけず家族にも影響を与えることがあるのです。
お子さんの不登校や生活態度に悩んでいる親御さんは、「子どもを受診させる」という方法だけではなく、「自分自身が治療を受けてみる」という選択肢も、ぜひ考えてみてください。

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