私は、森田療法を「医師が患者さんに施す治療」だとは考えていません。
森田療法は、誰かに何かをしてもらうことで良くなっていくものではなく、
本来は、自分自身に向けて行われるものだと思っています。
私自身、日々の生活や仕事の中で、
不安や違和感を抱えながらも、
「今、何を感じているのか」「どう行動するのか」を大切にし、
自分に向き合い続けています。
私が行っている森田療法は、まず私自身に向けられたものです。
その私と共に過ごし、共に作業する中で、
患者さん自身も、少しずつ
自分の感覚に気づき、
自分の人生を自分で動かしていく力を取り戻していきます。
そのため仁泉堂では、
薬を出すこと、
診断名をつけること、
診断書を書くこと、
「こうすれば良い」と力添えをすることを、行わないようにしています。
それらは一見、助けになっているようでいて、
患者さん自身が考え、迷い、選び取る機会を、
奪ってしまうことがあるからです。
もし「選択する行為こそが人生」だとするなら、
医師が安易に答えや方向性を与えることは、
その人の人生を横取りしてしまうことにさえ、なりえます。
仁泉堂の森田療法は、
患者さんが、自分自身に働きかけ、
自分で選び、自分で歩いていく過程に、
静かに伴走する営みです。
何かを「してもらう」ことで楽になるのではなく、
不安や迷いを抱えながらも、
自分の足で立ち、自分の感覚で生きていく。
その力を取り戻す場を用意したいと、私は考えています。
もし私が、医師として
患者さんに何かを与えないのだとしたら、
では、私は
いったい何をしているのでしょうか。
(つづく)

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