みなさんは、「スローシティ」という言葉をご存じでしょうか。
「ファストフード」という言葉なら、聞いたことがあると思います。
早さ、安さ、便利さを追求するファストフードに対して、食材の質や伝統的な調理法、食の安全性、そして食事をゆっくり味わう豊かさを大切にするのが「スローフード」です。イタリアで生まれたこの考え方は、食のあり方だけでなく、暮らし全体を見直す動きへと広がっていきました。
その一つが「スローシティ」です。
早さ、安さ、便利さばかりを追い求めるのではなく、地域の文化や自然、そこに暮らす人々の生活の質を大切にするまちづくりを目指しています。
実は、日本にもスローシティ国際連盟に加盟している地域があります。宮城県気仙沼市と、私たちの暮らす群馬県前橋市です。前橋市では「スローシティ前橋・赤城」として、地域の魅力を生かしたまちづくりが進められています。
便利さから、少し離れてみる
私は、便利さから少し離れてみることを大切にしています。
もちろん、早いこと、安いこと、便利なことには、それぞれ価値があります。時間や手間を省くことで、助かる場面もたくさんあります。
一方で、便利さを追求するあまり、失われてしまうものもあるのではないでしょうか。
ファストを選べば、スローのよさが失われることがあります。反対に、スローを選べば、ファストの利点を手放すこともあるでしょう。どちらか一方が正しいのではなく、その場に応じて選ぶことが大切なのだと思います。
ただ、今の社会は、少しファストに偏りすぎているように感じます。
早く結果を出すこと、すぐに答えを得ること、手間をかけずに済ませること。そうしたことが優先されると、時間をかけて味わうことや、一つひとつの体験を丁寧に重ねることが、後回しになりがちです。
けれども、暮らしの豊かさは、効率のよさだけで決まるものではありません。
食事をゆっくり味わう。身近な自然に目を向ける。地域の人々と関わりながら暮らす。すぐに答えを出さず、時間をかけて取り組んでみる。
そうしたことの中にも、便利さだけでは得られない豊かさがあるのだと思います。
速さと遅さ、その場に応じて
もちろん、何でもゆっくりすればよいというわけではありません。
救急医療の現場では、一刻も早い対応が命を救います。仕事でも、迅速に判断しなければならない場面があります。
大切なのは、いつでも速さを求めることでも、いつでもゆっくりすることでもなく、その場に応じて取り組むことではないでしょうか。
急ぐべきときには急ぎ、時間をかけるべきところでは丁寧に取り組む。便利なものを活用しながらも、便利さだけを基準にしない。
スローシティという考え方は、単に街の歩みを遅くすることではなく、私たちが何を大切にして暮らすのかを問い直すものだと思います。
スローシティ前橋・赤城の取り組みを応援しながら、私自身も、便利さや効率だけでは測れない豊かさを大切にしていきたいと思います。
そして、この「スロー」という考え方は、心の健康について考えるときにも、大切な意味を持つのではないでしょうか。
次回は、メンタルヘルスにおける「スロー」について、仁泉堂の診療姿勢とともに考えてみたいと思います。

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