いじめられた体験があるから、不安で動けないんです。
そんなふうに話す方が、私の外来にも来られます。
とても自然な気持ちだと思います。
あんな思いをもう一度するくらいなら、踏み出さないほうがいい。
そう思ってしまうのは、むしろ心が健全に反応している証です。
でも、私は医師として、少し違う視点も伝えたいと思っています。
「気分本位」ではなく「目的本位」で
これは、私が大切にしている考え方のひとつです。
「不安だからやらない」のではなく、
「やる必要があるから、不安でもやってみる」
気分に左右されずに、目的に向かって行動する力を育てていく。
それが、生きづらさを少しずつ軽くしていく大事なステップだと思っています。
とはいえ、この考え方は時に「冷たく」感じられてしまうこともあります。
「そうは言っても、怖いものは怖い」
「不安な気持ちはどうすればいいんですか?」
そうですよね。
ふと、私の中に浮かんだ言葉
そんなとき、ある言葉が私の中に浮かびました。
「今のあなたという存在に過去の出来事は関係しているかもしれないけれど、あなたがこれからする行動の選択に、過去は関係ない」
過去は、たしかに今のあなたをつくったかもしれません。
でも、その過去が「これからのあなたの選択肢」を決めてしまう必要は、ありません。
いじめられた体験があったとしても、
それを理由に、ずっと動けないままでいなければならないわけじゃない。
過去は、あなたの一部。
でも、未来はあなたの手の中にあります。
不安があっても「選べる」
ここで大切なのは、「不安がなくなったら動こう」ではなく、
「不安があっても動いていい」という感覚です。
不安を感じることは、悪いことではありません。
むしろ、それだけ人と深く関わったり、傷ついた経験があるということ。
心がちゃんと働いている証拠です。
でも、不安があっても、
「今の自分にできることを、ひとつだけやってみる」ことはできるかもしれません。
それが、過去に縛られない自由のはじまりです。
最後に
過去にどんなことがあったとしても、
これからどう生きていくかは、自分で選ぶことができます。
あなたには、その力があります。
過去に傷ついたあなたが、
今ここで新しい一歩を踏み出そうとしている。
そのこと自体が、とても尊いことなのです。
もし、うまくいかない日があっても大丈夫。
歩いたり、立ち止まったりしながら、
一歩ずつ進んでいけばいいんです。
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