ガイド付きのハイキングツアーを思い浮かべてみてください。
参加者は「とても楽しかった」「また来たい」と満足して帰っていきます。では、何がその体験を豊かなものにしたのでしょうか。
もちろん、ガイドさんの存在は欠かせません。しかし、本当に人を魅了したのは山そのものです。
澄んだ空気、鳥の声、木漏れ日、山頂からの景色。そうした自然の魅力を、ガイドさんは誰よりもよく知っています。そして、自分自身も山を味わいながら、参加者がその魅力をより深く体験できるよう案内しています。言い換えれば、山の楽しみ方の職人なのだと思います。
一方で、ディズニーランドを思い浮かべてみてください。
人々を魅了しているのは、まず何よりも、その世界観です。キャストの皆さんは、その世界を大切に守り、磨き続けることで、お客さんがその世界を存分に味わえるように働いています。
私は診療について考えるとき、この二つの職人の姿を思い浮かべます。
仁泉堂には、患者さんが日々の出来事を丁寧に語り、自分の感覚に気づき、実際に行動し、その体験を持ち寄る「治療の場」があります。その場そのものが、治療の大切な資源です。
もちろん、治療は遊びではありません。不安や葛藤と向き合う過程では、ときに痛みも伴います。決して「楽しい」ことばかりではないでしょう。
それでも、その場を十分に活用できたとき、人は新しい体験を重ね、少しずつ生き方が変わっていきます。
私の役割は、患者さんを変えることではありません。
山岳ガイドが山を深く味わい、その豊かな楽しみ方を参加者と分かち合うように。
ディズニーキャストが、その世界観を大切に守り、より魅力的な場を育て続けるように。
私もまた、仁泉堂という治療の場を大切に育てながら、その場で得られる体験を患者さんとともに深めていく職人でありたいと思っています。

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