外来で患者さんと向き合っていると、よくこんな言葉に出会います。
- 「私はみんなから仲間外れにされている」
- 「教員の接し方のせいで、子どもが引きこもった」
- 「病気でもないのに、できないのは許されない」
- 「仕事をサボってはいけない」
- 「自分より給料が高い人は、もっと働かねばならない」
どれも切実な訴えです。
同時に、これらはすでに一つの「結論」や「前提」を含んでいます。
前提が苦しみを固定する
これらの言葉に対して、
- 本当に仲間外れなのか
- 教員の関わりが原因なのか
- 働くべきかどうか
といった議論を始めると、
かえってその前提を強めてしまうことがあります。
ここで起きているのは、
不確実なものを、確定したものとして扱ってしまうこと
です。
前提をいったん保留する
私の外来では、こうした場面で次のように声をかけることがあります。
「物語ではなく、実体験を語れますか?」
「善悪、正しい正しくないは、決めない場所にしましょう」
これは、考えを否定するためではなく、
結論を急がず、その手前に戻るための言葉
です。
対話における不確実性の扱い
オープンダイアローグでは、
- 意味づけを急がない
- 結論を出さない
- 不確実な状態にとどまる
といった態度が重視されます。
前提を保留するという関わりは、
この「不確実性を守る態度」と重なります。
行動における不確実性の扱い
一方で、森田療法では、
- 不安や不快感はそのままにする
- そのうえで行動する
ことが大切にされます。
つまり、
不確実なままでも、生活は進めていく
という立場です。
外来で起きていること
外来の中では、次のような流れが生まれます。
- 前提に気づく
(例:「仲間外れにされている」という語り) - それをいったん保留する
(実体験に戻る) - そのうえで問いかける
「では、その状況の中で何ができそうですか?」
ここで重要なのは、
前提が確定してから動くのではない
という点です。
「わからないまま」という姿勢
多くの人は、
- 正しく理解できれば動ける
- 納得できれば変われる
と考えています。
しかし実際には、
「わかろうとするほど動けなくなる」
ことが少なくありません。
最後に
不確実なものに、すぐに答えを与えないこと。
そして、不確実なまま一歩を進めること。
外来森田療法に、オープンダイアローグの視点を重ねると、
「前提を保留したまま関わり、前提を保留したまま動く」
という一つの臨床のかたちが見えてきます。

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