ブログ「あるがままを生きる」をお読みいただいている患者さんであっても、診察室での第一声や日記の中で、
「良くないことがありました」
「良くないイメージが浮かびました」
「調子がよくない」
といった表現を使ってしまう場面が、少なくありません。
ご本人に指摘すると、「頭では分かっているのですが…」という反応が返ってきます。
つまり、理解はしていても、まだ日常の中で自然に使えるところまでは定着していないのです。
実際にお話を聴いてみると、その背景には、家族間の口論や不愉快な出来事など、確かに心が動く体験があります。
しかし、ここで丁寧に見ていきたいのは、その出来事は本当に「良くないこと」なのでしょうか、という点です。
多くの場合、それは
「好ましくないこと」
「自分にとって都合のよくないこと」
と表現する方が、より事実に近いのです。
言葉の違いは、些細なことか
「結局、同じ意味ではないか」
「たかが言葉の問題でしょう」
そう感じる方もいるかもしれません。
しかし、この違いを丁寧に扱うかどうかで、心の中に生まれる苦しさは変わってきます。
「良くない」と言い切った瞬間、その出来事は“否定すべきもの”として固定されます。
一方で、「好ましくない」「都合がよくない」と表現すると、それはあくまで“自分との関係の中での評価”にとどまります。
このわずかな違いが、心の余白を生みます。
なぜ言葉の違いで苦しさが変わるのかについては、また別の機会に詳しく触れたいと思います。
言葉を整えるということ
森田正馬は、次のような言葉を残しています。
「外相整えば、内相自ずから熟す」
これは、「態度や行動を整えていくと、心や身体も自然と整っていく」という意味です。
私はこの中に、「言葉を整えること」も含まれていると考えています。
言葉は単なる表現ではなく、私たちの態度そのものでもあります。
だからこそ、日々の何気ない一言を丁寧に選ぶことが、結果として心の安定につながっていくのです。
日常の中でふと口にする言葉。
その一つひとつが、自分の内面のあり方を静かに形づくっています。
まずは「良くないことがあった」と言いそうになったときに、
「これは本当に“良くない”のだろうか」と立ち止まってみること。
それだけでも、心の扱い方は少しずつ変わっていきます。

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