【第200回】日記を書くという行動──私自身の実践から

森田療法

森田療法では、日記を書くことが勧められます。

理由はいくつかありますが、ひとつには「思考にとどまっていたものを、言葉として外に出す」という行動の第一歩になるからです。

苦しさや不安が頭の中でぐるぐると回っているとき、それを書き出してみるだけで、「あれ、思っていたほどではなかったかもしれない」と気づく方もいます。

私が患者さんにお願いしているのは、頭の中で組み立てた物語ではなく、**実際にやったこと、そしてそれを体験した“あなた自身の感想”**を記すことです。

「こういうふうに思いたかった」といった願望ではなく、「こう感じた」「こうだった」と率直に記す。

そうすることで、感情や思考の渦から、少し距離を取ることができます。

このブログも、今回で200回目になりました。

ここまで続けてこられたのは、「思いを言葉にして外に出す」ことの力を、私自身が実感してきたからです。

日々の診療の中で揺れる気持ちや迷い。

自分がどんな生き方を選びたいのか、社会や自然とどう関わっていきたいのか。

そういったことを言葉にしながら、私は少しずつ、自分の現在地を確かめてきたように思います。

思考に留まるだけでは、何も動きません。

けれど、一行でも書くことで、それが行動になります。

行動すれば、感情も状況も少しずつ変わっていきます。

私が診療でお伝えしていることは、自分自身が実践していることでもあります。

だからこそ、私にとってもこのブログは、大切な「森田療法の実践の場」なのです。

今後も、専門的すぎず、それでいて本質から離れないかたちで、言葉を重ねていきたいと思います。

いつも読んでくださっている皆さんに、心から感謝をこめて。

コメント

  1. 心を紡ぐ猫 より:

    200回、おめでとうございます!
    久しぶりにコメントさせていただきます。

    自分の体調などで、まとめ読みになってしまう時もありますが、色々学ばせていただいています。

    どうしても鬱が強い時は、今までできたこと、こうすればよかったと行動できたことが、わからなくなってしまいます。頭の中が少しのことでいっぱいになってしまいます。
    そんな時に、先生のブログを読んで、そうだったなと思い出します。

    ブログの引用ですが、
    「心の持ち方」全般を自由に操ることはできません。不安や焦り、悲しみや苛立ちといった感情は、意識的にどうこうしようと思っても、思い通りにはならないものです。

    この文章に、よく助けてもらうんです。
    不安や焦りばかりを、早くなんとかしなくては!なんとかしなくては!。そう囚われてしまう時に、そこじゃないよって気がついて冷静になってきます。

    いつもありがとうございます。
    これからも、ブログやYouTubeを楽しみにしています。

    • 大仁 大仁 より:

      心を紡ぐ猫さん
      コメントありがとうございます!
      200回目の節目に、こうしてまたお声を聞けたこと、本当にうれしく思います。

      体調や気分の波がある中でも、ご自身のタイミングで読んでくださっていること、とてもありがたく思います。無理のないペースで、関心を持ち続けてくださっていること自体が、すでに大きな力なのだと思います。

      「今までできていたことがわからなくなる」「頭の中が少しのことでいっぱいになる」——そんな状態に陥るとき、自分を責めたくなってしまう方も多いのですが、心を紡ぐ猫さんはそんなときの自分も受け止めようとしている。その姿勢に、私はとても深い敬意を感じます。

      ブログの一文が、そのようなときに少しでも立ち戻るきっかけになっているなら、書いてきてよかったなと思えます。不安や焦りを「どうにかしなきゃ」と思えば思うほど、苦しくなってしまう。でも、心を紡ぐ猫さんのように「そこじゃなかったな」と気づけることが、実はとても大切な力なのです。

      これからも、必要なときにふと思い出してもらえるような発信を続けていけたらと思います。
      こちらこそ、いつもありがとうございます。

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