部屋の中にいると、ほとんどすべてのものに人の手が加わっていることに気づく。
家具、壁、照明、床。どれも誰かが設計し、作り、運び、配置したものだ。
では外に出たらどうだろう。
ベランダの鉢植えも、庭木も、人が植え、剪定している。
森の木々でさえ、よく見ると植林の跡があり、
川の流れには護岸工事のコンクリートが見える。
「人の手がまったく加わっていないもの」を、私たちは本当に見つけられるだろうか。
私が思いついたのは、空、海、そして山の輪郭だった。
山も細かく見れば、道路や鉄塔、伐採地だらけだが、
地形そのもの——あの稜線の形までは、人間はなかなか変えられない。
群馬県は海に接していない。
となると、いちばん簡単に「人の手の及ばないもの」に出会えるのは、空かもしれない。
雲はどうだろう。飛行機雲は人間の産物だが、
夜の星空にまで人は手を伸ばせない。
太陽も、夜空の無数の星々も、私たちとは無関係に燃え続けている。
現代の私たちは、「問題は理解すれば解決できる」という体験を積み重ねてきた。
その結果、いつの間にか、人間の無力さや、
自然の摂理に抗えないという事実を忘れがちになっている。
星空を見上げると、私はそのことを思い出す。
自分の小ささに気づき、
同時に、どこかほっとするような、心地よい諦めが訪れる。

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