今回のレースで、私が最も意識していたのは低体温のリスクだった。
雨に打たれ、体が冷え、もし脚が止まれば心拍が下がる。心拍が下がれば、体はさらに動かなくなる。その連鎖が始まれば、リタイアは現実的な選択肢になる。
だから私は、常に心拍を120〜150の範囲に保つことを意識していた。
これは身体を冷やさず、かといって、消耗させない。生きるために必要な最低限の活動量を維持するという感覚に近い。
泥に足を取られ、思うように走れない区間では、後続のランナーに何度も道を譲った。前に進んでいた人たちが、次々と視界から消えていく。そのたびに、気力が少しずつ削られていくのを感じた。
それでも脚を止めなかった。
速くなくていい。きれいに走れなくていい。
とにかく、止まらない。
この判断は、自然条件を前にした現実的な選択だった。
仁泉堂の診療でも、「気持ちが整ってから動く」のではなく、「動き続けられる条件をどう確保するか」を一緒に考えることが多い。止まらないための小さな選択を積み重ねる感覚は、こころの問題にもそのまま重なる。

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