「うつ」は必ずしも「うつ病」ではない:薬に頼らないアプローチ

仁泉堂医院

「うつ」と「うつ病」は同じではありません

このブログをご覧いただいている方の中には、「自分は『うつ』だけれど、神経症ではないから仁泉堂を受診できないのではないか」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。そこで今回は、当院での診療方針と「うつ」と「うつ病」の違いについてお話しします。

重症の「うつ病」とは?

当院では、重症のうつ病については診療を行っていません。これは、抗うつ薬療法が治療の主軸となるためです。

ここで指す「うつ病」とは、生活全般に喜びや価値を感じられなくなる状態を指します。さらに進行すると、次のような訂正不能な思い込み(妄想)に至ることもあります。

• 「自分は過去に犯罪を犯した」

• 「自分の体が極端に衰弱している」

• 「破産してしまった」

これらの状態は、特に50代以降に見られることが多く、脳の加齢現象が影響していると考えられています。このような場合、専門的な薬物療法や入院が必要となります。

若年者の「うつ」は異なるもの

一方で、若年者が抱える「うつ」の多くは、上記のような「うつ病」とは異なる仕組みで生じていると私は考えています。そのため、「うつ病」というラベルを安易に貼ることが、かえって治療の妨げになる可能性があります。

若年者の「うつ」は、多くの場合、以下のような状態にとらわれていることが特徴です。

• 否定的な考え

• 不快な感覚や、感情的な記憶

これらへのとらわれが、日常生活の停滞や心の苦しさにつながっています。しかし、これらの否定的な考えや感覚を「なくす」ことを目標にするのではなく、「あって良いもの」と受け入れた上で、その人の能力や状況に応じた自然な活動を促すほうが、心の豊かさや適応力が回復しやすいのです。

「うつ」にも適切な助けが必要

「うつ」は必ずしも「うつ病」ではありません。しかし、これは決して「助ける必要がない」という意味ではありません。むしろ、うつ病でない若者たちが抱える「うつ」には、薬ではなく、精神療法や心理療法の助けが必要だと考えます。

森田療法の可能性

若年者の「うつ」の根底にある、とらわれの悪循環を断つための治療として、森田療法はひとつの有力な選択肢です。

「否定的な感情や考えを排除しようとするのではなく、それらを抱えたまま今できることを行う」——この姿勢は、森田療法の核となる考え方であり、多くの若者が再び自然な生活の流れを取り戻す手助けとなるでしょう。

当院では、森田療法を取り入れた診療を行っています。「うつ」を病気としてではなく、とらわれの悪循環として治療することができます。

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