先日、こんなことを話してくれた方がいました。「〇〇さんのコラムを読んで、『否定的な感情を持つのは悪いことじゃないんだ』、そう気づいた」と。
その瞬間、私は少しだけ水を差すようなことを言ってしまったかもしれません。でも、大切なことだと思って、こう伝えたのです。
「その気づきが、あなた自身の体験に根ざしたものかどうかが、とても大事です」
「そして、気づいたあなたが、次にどんな行動をとるか。それはもっと大切です」
私たち仁泉堂の治療では、“気づき”そのものよりも、「行動」と「体験」を何より大切にしています。
他人の言葉から得た頭の中の“気づき”ではなく、自分の体を通して沁み込んだ“実感”があってこそ、本当の意味での変化が生まれるからです。
そんな話を交わしていくうちに、その方がすでに、前回の診察からの期間に勇気を出して、新たな一歩を踏み出していたことが分かりました。その行動こそが、治癒への道を切り拓くのです。
精神療法や心理療法というと、“気づき”が主役のように語られがちですが、実際に人生を変えていくのは、やっぱり「行動→体験→行動→体験」の積み重ね。
気づきで満足せず、ほんの少しでもいいので、動いてみる。試してみる。その繰り返しが、確かな変化を生み出していきます。
気づいたら、次は一歩。それが、あなた自身の物語を進める鍵になるかもしれません。
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