精神科の診断は本当に必要? 〜診断よりも大切なこと〜

仁泉堂医院

仁泉堂医院に初診を希望される方の中には、「治療を受けたい」というよりも「診断をしてほしい」とおっしゃる方が少なくありません。精神的に苦しい状況で、自分の状態をはっきりさせたいと思うのは自然なことかもしれません。しかし、私は「診断することが本当に役に立つのか?」と考えることがあります。

精神科の診断は変わり続ける

精神科でよく使われる診断基準のひとつに、アメリカ精神医学会のDSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)があります。この基準はおよそ10年に一度見直され、変更され続けています。つまり、精神科の診断は絶対的なものではなく、現時点での「仮の基準」に過ぎません。

もちろん、統合失調症や双極症、重度のうつ病など、薬物療法が必要な疾患では診断が重要です。これらの病気では、適切な薬を使うことで回復を期待できるため、診断が治療につながるのです。(詳しくは、YouTube「精神科医のあるがままチャンネル」の初回動画をご覧下さい)https://youtu.be/EsGrfDEyjH0

診断が治療につながらないこともある

一方で、不安や神経症性の「うつ」、人間関係の悩み、ストレスによる不調など、薬物療法が根本的な解決にならないケースでは、診断が必ずしも役に立つとは限りません。診断名がついたからといって、根本的な解決につながるわけではなく、むしろ「○○という病気なんだ」と思い込んでしまうことで、余計に不安や「自分が特別なのだ」という考えにとらわれてしまうこともあります。

精神科医が本当にすべきこと

私が精神科医として伝えたいのは、「診断がつけば楽になるわけではない」ということです。一時的に楽になったように感じたとしても、束の間の安らぎに過ぎません。診断が必要な場合もありますが、多くの精神的な悩みについては、むしろ「薬が不要である」と伝えることのほうが重要だと思っています。

では、薬が必要ない場合はどうすればいいのでしょうか?

その後の道として、私のように精神療法(心理的アプローチ)を専門にする精神科医を受診する方法もありますし、心理療法家に相談するのもよいでしょう。大切なのは、「診断を受けること」ではなく、「適切な治療法を見つけること」です。

まとめ

精神科の診断は、時に治療の助けになりますが、すべてのケースにおいて必要とは限りません。特に、薬が根本的な解決にならない場合は、診断にこだわるよりも、自分に適した治療法を探すことのほうが大切です。

「診断を受けること」ではなく、「どうすれば、本当に心が楽になるのか」。この視点を持つことが、精神的な苦悩を軽くする第一歩になるのではないでしょうか。

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