調子が悪い時こそ減薬を試す意味
現在、減薬を進めている患者さんの一人が、風邪を引いて体調不良が続いていました。診察で私は、「体調が回復してから、次のステップとして、もう一段階薬を減らしましょう」と提案しました。しかし、その方は思いもよらない発言をされました。
「どうせ調子が悪い今こそ、減らしてみようと思うんです。減らしたことで不調が起きても、今なら大して問題にならないでしょうから」と。
その意見を受け入れ、減薬を実行しました。次の診察で、その方はこう報告してくれました。
「1〜2日頭痛がありましたが、薬を減らしたせいかどうかは分かりません。今はもう大丈夫なので、次も減らせそうです。」
この報告を聞き、改めて「調子が悪い今こそ減薬を試す」という考えが、案外賢い選択であることを感じました。
傷つくことを恐れる心理と減薬のタイミング
新品の製品を使うとき、人は傷をつけたくないという心理から、必要以上に慎重になることがあります。しかし、ある程度使い込んで傷がつくと、必要最低限の注意で気軽に扱えるようになるものです。
同じように、体調が良いときほど「この調子を崩したくない」という心理が働き、減薬に慎重になりやすいのかもしれません。一方、すでに調子が悪いときには「これ以上悪くなるかもしれない」というリスクを、比較的受け入れやすくなる場合があります。
もちろん、減薬にはリスクも伴うため、慎重な判断と専門家の助言が必要です。しかし、「調子が悪い時だからこそ減薬を試す」という視点は、場合によっては合理的なアプローチと言えるのではないでしょうか。
日々の診療で学ぶことは多いものですが、この患者さんの選択からも、減薬を進める上での心理的な側面について大きな気づきを得ることができました。
コメント