オンラインで視聴可能になった日本精神神経学会総会の魅力
コロナ禍以降、日本精神神経学会の総会はオンラインでも視聴できるようになりました。これは多くの参加者にとって非常にありがたい仕組みです。現地参加の場合、どうしても講演時間が重なってしまうことがあり、聞きたかった演題に参加できないことも少なくありません。しかし、オンライン視聴ではそのような制約がなく、後から繰り返し視聴することも可能です。
今回、私がご紹介したいのは、「『心の病が治る』とはどのようなことか?」という興味深いシンポジウムです。精神科医以外の方には、このようなテーマが学会で検討されていることを、他の診療科や医学分野との違いとして知っていただければと思います。
シンポジウムで特に印象的だった信原幸弘先生の発表
シンポジウムで特に私の関心を引いたのは、哲学者である信原幸弘先生の発表でした。その内容を簡潔にまとめると、以下のような点が挙げられます。
- 「心の病」を扱う際、自己は「関係的自己」であり、個別的であると捉えること。
- 「心の病が治る」ということは「人それぞれ」であるという多様性。
- 人間は「社会的存在」であるため、医療制度は必要であるが、その制度は個別的な患者に対して不可避的に暴力的な作用を及ぼしてしまう可能性があること。
- 医療制度の持つ暴力的な作用と、個々の患者の個別性との葛藤に、どのように折り合いをつけるべきかという課題。
これらの指摘を受けて、私自身も精神医療の現状について考えさせられました。現在、精神医療の制度はますます細かく規定されつつありますが、もう少し現場に任せ、現場の裁量を広げる余地を残すことが重要なのではないかと感じました。
精神科医の皆様にお聞きしたいこと
今回のシンポジウムを通じて考えさせられたのは、医療制度のあり方と現場の裁量のバランスです。このテーマは非常に繊細であり、答えは一つではないでしょう。他の精神科の先生方のご意見もぜひ伺いたいところです。皆さんは、医療現場での実践と制度との間でどのような工夫をされているでしょうか。
このような学会での議論が、今後の精神医療の発展に繋がっていくことを期待しています。
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