「一周まわって、何とかなった」——患者さんの言葉に学ぶ人生の回復力

仁泉堂医院

「病気をいっぱいしたから、一周まわって、何とかなったんですかね」
これは、ある患者さんの口から出た、非常に印象的な言葉です。

この方は数年来、私の元へ通院されていました。過去には睡眠薬や抗うつ薬の服用を続けており、治療の一環として薬を使わない選択肢を提案したときも、迷いを抱えながらも転医ではなく薬なしの治療への移行を決断されました。その過程で、複数回にわたる手術を経験されるなど、大きな試練がありました。

それでも、数年前に比べると明るい変化が見られました。友人と一緒に食事を楽しんだり、外出の機会を増やしたりと、日常生活の中での喜びを感じられる場面が増えてきたのです。

苦しい状況をどう乗り越えたのか

ある日私は、「今の方が、体調的にはしんどい部分もあると思いますが、この変化のきっかけは何だったのでしょうか?」と尋ねました。そのときに返ってきたのが、冒頭の「一周まわって、何とかなった」という言葉です。

その言葉を聞いたとき、私は時計の目盛りのような円盤を思い浮かべました。不快な感覚や感情が生じるたびに、針が触れるような装置をイメージしてみてください。その針を無理に「0」に戻そうとするのではなく、放置しておいた結果、360度回って自然と「0」に戻った——そんな感覚ではないかと思いました。

その言葉に込められた意味

この言葉は、相当な苦労を経験された方だからこそ語れるものだと感じます。私自身には到底語ることのできない重みを持つ言葉です。しかし、患者さんの体験を通して、このような回復の形もあり得るのだということを学ばせていただきました。

人は必ずしも一直線に進む必要はなく、時には「遠回り」に見える道が結果的に最短だったりすることがあります。この患者さんの言葉は、そんな回復力や人間の可能性を示してくれているのではないでしょうか。

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