私の診療では、人間関係の問題に対して安易な解決策を取ることは避けた方が良いと考えています。ここに示すのは、あくまで私自身の価値観と行動指針です。
安易な解決策には、相手に脅威を与えて行動を促す方法が含まれます。例えば、怒りや暴力で相手を従わせることです。また、権力を使って相手を抑え込むことも広義の脅威といえるでしょう。教師が生徒に対して、上司が部下に対して過度な要求をすること、あるいは医師が安易に診断書を書き、職場や学校に提出する場合も、力による解決の一例かもしれません。
さらに、物質的な快楽を提供することも一つの安易な手段です。賄賂や接待がその典型であり、子供を静かにさせるためにスマートフォンを与える行為も該当します。医師が安易にベンゾジアゼピン系の薬(いわゆる「安定剤」)を処方することも同様です。これらの薬は一時的に不快感を取り除き、患者の満足を得やすいため、診察時間の短縮、医療機関の利益にも繋がりやすいのです。
しかし、こうした安易な方法は効果が一時的であり、ほぼ必ず副作用を伴います。脅威や権力による解決は、より強力な力に屈せざるを得なくなり、権力争いに発展することが多いです。物質的な快楽も、提供が途切れると逆戻りし、安定剤には認知機能への影響や転倒リスク、さらには依存症や離脱症候群のリスクがつきまといます。
人間関係には常に摩擦や問題がつきものです。安易な解決策を避けることが大切だと私は考えています。解決に向けての第一歩は、まず「解決には時間と手間がかかる」という覚悟を持つところから始まるのではないでしょうか。
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