診察の中で、患者さんから時々「〜じゃないですかぁ」という言葉を耳にすることがあります。例えば、「上司には逆らえないじゃないですかぁ」「子育ては大変じゃないですかぁ」「頭痛は辛いから、頭痛薬を飲むしかないじゃないですかぁ」といった表現です。
かつて薬物療法を併用していた頃は、限られた診察時間の中で、あまり細かい部分にはこだわらず、患者さんの話を優先していました。しかし、神経症治療の観点からは、この「〜じゃないですかぁ」をそのままにしておくことには、2つの問題があります。
一つは、患者さんの中にある固定観念をそのままにしてしまう可能性があること。そしてもう一つは、患者さんが無意識のうちに、自分の固定観念を医師にも肯定してもらおうとする態度を強化してしまう恐れがあることです。
処方を中止し、神経症治療専門のクリニックに移行してからは、「〜じゃないですかぁ」が出てきた場合、その場で少し立ち止まって疑問を投げかけるようにしています。なぜなら、「〜じゃないですかぁ」と発言する癖が、固定観念に囚われ、あるがままに生きられなくなっている一因であると感じるからです。
もし「〜じゃないですかぁ」と言ってしまう自分に気づいたときには、「〜と決めつけてしまっていないか?」「相手に自分の固定観念の承認を求めていないか?」と、少し立ち止まって自問してみると、新たな視点が見えてくるかもしれません。
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