日本文化には「引き算の美学」という概念があります。茶道、華道、日本庭園、和食などに見られるように、足りない部分があるからこそ、そこに可能性を生み出し、人々が自由に想像を膨らませる余地が生まれるのです。空間に余白を残すことで、感じる側に委ねられ、無限の解釈や発想の広がりを提供する―これが本当の「自由」と言えるのではないでしょうか。
かつて私は、日本は戦後の欧米の影響で初めて自由を手に入れたと考えていました。しかし、今では日本文化の中に、昔から本当の自由が存在していたのだと感じています。「無いこと」が自由の源であったのです。
一方、現代の医療現場を見てみると、診断基準や治療ガイドライン、さらには医療制度までもが年々複雑化し、項目が増え続けています。教育や法律の分野でも同様に、加えることが優先され、引き算が軽視されているのではないでしょうか。
私たちがより豊かに暮らしていくためには、今一度「引き算の美学」に目を向け、余白を大切にすることの価値を見直す時期に来ているのではないかと感じています。
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