「死んでも、生き様が残る」——ある患者さんから教わったこと

仁泉堂医院

「死んでも、生き様が残る」——ある患者さんから教わったこと

以前、当ブログでは「人間はどうせ死ぬとわかっているのに、なぜ頑張れるのか」という問いについてお話ししたことがあります。
私自身も、生きる意味は一つに決まるものではなく、「ただ目の前の問いに答え続けること」が人生なのかもしれない……そう感じながら日々を過ごしてきました。

しかし、こうした考えは言葉で説明しきれない部分も多く、「それでは心の支えにならない」と感じる方もいらっしゃるでしょう。
そんな中で、ある患者さんが静かに語ってくださった言葉が、私の心に深く残りました。


「死んでも、生き様が残る」

その方は、亡くなられたお母さまの思い出を話してくださいました。
お母さまはがんを患い、余命が短いと告げられていたにもかかわらず、

  • 「明日は〇〇してみよう」
  • 「〇〇へ行けるように、少し歩いてみる」

そんなふうに、毎日を生き抜いたそうです。

決して華やかではなく、むしろ泥臭いほどに一歩ずつ歩んだ日々。
しかし、その「生き様」は確かにお子さんの心に残り、今でも力を与え続けています。

お話しくださった患者さんは、最近、長く抱えてきた課題を乗り越え、薬の治療も一区切りを迎えました。
その背景には、お母さまの思い出が静かなエネルギーとして寄り添っていたのだと思います。


生き様は、目に見えないけれど確かに残る

物や成果が残らなくても、人の心に刻まれる生き方があります。
誰かが懸命に生きた軌跡は、時間がたっても薄れず、むしろ必要なときにそっと力を貸してくれるのだと、改めて教わりました。

私たちが日々向き合う患者さんの歩みに、そんな「生き様」が宿っていることを思うと、その尊さに頭が下がる思いです。

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