薬を「なるべく使わない治療」と「全く使わない治療」の違い

仁泉堂医院

薬はなるべく使いたくない——そう考える患者さんや医師は少なくありません。

実際、薬の使用を最小限にとどめ、自然な回復力を生かしたいという願いは、誰にとっても共感できるものです。

しかし、治療が行き詰まったとき、医師も患者も、つい薬に意識が向いてしまうことがあります。

「薬の量が足りないのではないか」「薬を飲めば勇気が湧くのではないか」——そんな思いが浮かぶのは、ごく自然なことです。

けれども、この“薬でなんとかなるかもしれない”という幻想が、医師の反省や患者の一歩を先送りにしてしまうことも多いのです。

「なるべく使わない治療」は、薬を前提としながらも、使用の頻度や量を減らそうとする姿勢です。

一方で、「全く使わない治療」は、薬に頼らないという前提のもとで、治療者と患者がともに自分自身の在り方を問う営みです。

そこでは、医師は固定的な判断や一辺倒な指示を避け、常に治療の手を反省し、更新し続ける覚悟が求められます。

同時に、患者もまた、恐れを抱えながらも自らの足で一歩を踏み出す勇気が試されます。

私が実践している「薬を全く使わない治療」は、患者さんの力だけでなく、私自身の臨床をも磨き続けてくれます。

薬を手放してからというもの、精神療法はより研ぎ澄まされ、かつ柔軟なものになりました。

そして、患者さん自身の回復力が高まり、人生の歩みが確かなものになっていくのを感じています。

症状を“なくす”ことではなく、“自分を変える”ことで治癒を目指したい方へ。

ぜひ、共に人生を磨いていきましょう。

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