森田先生、夢の価値を見直してみませんか?

森田療法

森田正馬全集(第六巻)に記されている、森田正馬の夢に対する見解を紹介します。森田は、夢分析に対して独自の視点を持っていました。特に、フロイトの夢分析について「潜在意識」という概念や夢の象徴的な解釈に対し、否定的な見解を述べています。

森田の夢に対するこの姿勢は、潜在意識や無意識の力を過小評価しているように感じられます。これは、当時の日本ではユング心理学がまだ広く紹介されていなかったことが関係しているかもしれません。もし森田がユング心理学の夢に関する考えを知っていたなら、彼の見方も変わったのではないでしょうか。

実際、森田自身が体験した夢をこう記しています。

「直径一間位の砂地の窪みがある。深さは五寸位。余はその中に入り込み、これから出ようとした時、砂がくずれて、でにくいような気持がする。この気持と共に、穴の深さが、二尺位になる。ややじれったくなって、手をかけて、かき上ろうとすれば、たちまち三尺もの深さになる。これから出ようと焦れば、その上に、トゲの多いイバラの蔓が、からまっている。誰か人の助けを借りようと思って、後方を見上げれば、上に外の廊下が通じている。広さ三尺ばかりで、低い欄干がついている。声を立てて、人を呼ぼうかと思ったけれども、人のいそうな部屋までは、だいぶ遠いようで、どうしようかと思い惑ったのである。」

この夢をどう解釈するかは、夢分析の専門家によって意見が分かれるかもしれません。しかし、私はこう考えます。森田のように焦って外に出ようとする代わりに、窪みを観察し、そこに何が隠されているのか探ってみるのも一つの方法ではないでしょうか。夢は私たちが普段気づかない心の深層との出会いの場です。時には、夢の中にある困難や障害をじっくり見つめ直すことで、新たな視点や自己理解が得られることがあります。

森田療法の「あるがまま」という考え方は、ユング心理学で言う「個性化」や「自己実現」と重なる部分があるように思います。夢の解釈は、自己の内面をより深く理解する手助けとなるのではないでしょうか。そうした意味で、夢の価値を再評価し、無意識の力をもう少し重視しても良いのかもしれません。

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