心理療法の基礎理論を扱った名著『変化の原理』で、ワツラウィックらは「人間の頭脳のような複雑な装置については、動作原理を問うよりも、それが何をする装置なのかを問う方が実用的である」と述べています。これは、パソコンやスマートフォンを例にすると分かりやすいでしょう。多くの人が、これらのデバイスが「なぜ」動くのかを知らなくても、「何ができるか」を理解し、それを日常的に使いこなしています。
ワツラウィックらは「心理療法において、変化のために『なぜ』(原因)を追求することが、かえって変化を妨げる」とも指摘しています。外的ストレスや過去のトラウマに原因を求めることは、問題の説明には役立つかもしれませんが、解決にはあまり貢献しないのです。
「ストレス源から離れれば問題は解決する」と考える人もいるかもしれません。しかし、社会にはストレスの要因が至る所に存在し、避け続けることは困難です。さらに、ストレスの記憶は心に残り続けることもあります。
そのため、「なぜ」を追求するよりも、「今、何が起きているのか?」に焦点を当てることが重要です。ここで、森田療法が有効なアプローチとして浮かび上がります。森田療法は原因を追求せず、「とらわれ」の悪循環を問題とし、それを解くことに焦点を当てるからです。
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