ひとつの動きだけを繰り返すトレーニングを続けていると、使われない筋肉が固まり、やがて全体の動きが重くなっていきます。
心もそれとよく似ています。
同じ職場、同じ役割、同じ人間関係の中に居続けていると、心の使われ方が偏っていきます。ある側面ばかりが酷使され、別の側面は眠ったままになる。その結果、心の「可動域」が少しずつ狭くなっていきます。
本来、人の心には、状況の変化に素早く反応する瞬発力も、うまくいかない状況で踏ん張る持久力も備わっています。ところが、限られた場面でしか生きていないと、そうした力が発揮されないまま眠り、使い慣れた部分だけで無理にやりくりすることになります。それは、同じ筋肉ばかりで走り続けて故障を繰り返すランナーの体とよく似ています。
私は、この世界を生き抜くために必要な心のあり方(心のランニングフォーム)は、ウルトラマラソンを走り切る体のあり方に近いと感じています。効率よく力を使い、無駄な緊張を減らし、長く動き続けられること。これが、心のランニングエコノミーです。
心のランニングフォームをととのえるのに大切なのは、「普段使っていない心の側面」を動かすことです。
たとえば、仕事が終わったら、仕事とはまったく違う作業をしてみる。
いつもと違う人と会ってみる。
慣れた役割から、少し外れてみる。
そこに、心地よさだけを求める必要はありません。
楽しいか、つらいか。良いか、悪いか。そうした評価をいったん脇に置いて、新しい感覚や感情を自分に与えてみることが大切です。
使われていなかった心の筋肉が動き始めると、心は自然に柔らかさを取り戻します。無理に頑張らなくても、折れにくく、故障しにくい心になっていく。
それが、心のランニングエコノミーなのです。

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