これまで私は、数えきれないほどの場面で「敵(かな)わないな」と感じてきました。
音楽に触れたとき、学力試験の点数を見たとき、スポーツでの競い合いのとき。
特に強く印象に残っているのは、大学院で研究を始めた頃のことです。研究の目的を私が一生懸命に説明すると、ボスは一言で「つまり〇〇ということやろ!」とまとめてしまいました。私が10分悩んで捻り出す答えを、この人は10秒で言い当ててしまう。自分の能力の限界を痛感した瞬間でした。
やがて私は、研究の世界で自分が貢献できることは限られていると感じ、修了後はその道から離れました。
トレイルランニングでの「別格」との出会い
今はトレイルランニングのレースに出場しています。ここでも同じように、「別格の速さ」を持つ選手たちがいます。私が最善を尽くしても、彼らははるか先にフィニッシュしてしまう。
しかし不思議なことに、この「敵わない」という感覚が、研究のときのようには私を遠ざけません。
自分だけの限界を追う
トレイルランニングでは、私は誰かに勝つためではなく、自分自身の限界を追い求めています。
それは、心と身体が最高に連動する瞬間を求めることであり、山や地面と一体となる感覚を味わうことでもあります。
タイムでは敵わない相手がいても、私の「連動と融和」は、私にしか生み出せない。
だからこそ、この挑戦には意味があるのだと思います。
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