「2ヶ月間、タバコを吸っていません。でも、やめたとは言いません。」
診察の中で、ある方がそう語ってくれました。
「やめた」と言ってしまえば、一生吸わないと未来を約束することになります。しかし未来のことは、誰にも保証できません。だからこそ、この方は「ただ2ヶ月間吸っていないだけです」と正直に表現されたのです。
この姿勢に、私は大切なことを感じました。未来を決めつけるのではなく、いま目の前でできる行動を選ぶ。その積み重ねが、結果として大きな変化につながっていきます。
これはタバコだけの話ではありません。不安にとらわれているとき、私たちは「これから先どうなるのか」「失敗したらどうしよう」と未来の心配に心を奪われがちです。しかし実際にできることは、未来を保証することではなく、今日できる一歩を踏み出すことです。
森田療法の基本もここにあります。不確実な未来に振り回されず、現実に即して行動する。その中で人は自然に回復し、変化していきます。
臨床の現場で学んだこの方の姿勢は、私たち一人ひとりにとってのヒントでもあります。大切なのは「やめられるかどうか」や「うまくいくかどうか」を先に決めることではなく、いま選べる行動を淡々と積み重ねていくことなのです。
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