スマートフォンやパソコンを使っていて、こんな経験はありませんか?
「アプリを立ち上げた途端に動きが悪くなる」
「いつも使っているアプリが、最近やたらと重い」
「フリーズして、何もできない」
原因はいくつかありますが、多くの場合は、アプリがその端末に対して負荷をかけすぎていることにあります。処理が複雑になりすぎて、端末の性能を超えてしまっているのです。
では、私たち人間のこころの動きについてはどうでしょう?
神経症は、「重すぎるアプリ」を抱えた状態
神経症的な悩み――たとえば、不安が止まらない、完璧にやらなければ気がすまない、人の評価ばかり気になる――といった状態は、まさに「あなたという端末」に、処理の重いアプリがインストールされてしまったようなものです。
本来の性能では支えきれないほどの、過剰な思考や感情の処理が行われていて、心がフリーズしてしまう。まるで、バックグラウンドで常に大量のアプリが動いているスマホのようです。
端末は替えられない。でも、アプリは修正できる
スマホなら、動作が重くなったとき、次のような対策をとります。
- 不要なアプリを削除する
- より軽量なアプリに入れ替える
- それでもダメなら、端末ごと買い替える
でも、人間の場合は「端末=自分の脳や身体」を買い替えることはできません。栄養を整えたり、運動で脳や体のパフォーマンスを最大化することはできますが、限界もあります。
だからこそ必要なのは、「アプリの修正」です。
つまり、今のあなたの思考パターン、行動パターンを見直して、「より効率的で、軽くて、あなたに合ったプログラム」に書き換えていく作業です。
精神療法は、アプリを修正するためのプロセス
多くの精神療法は、「心のアプリを修正する」ための方法論です。
今のあなたが、抱えきれないほどの処理を背負い込んでいるなら、プログラムの見直しが必要です。
無駄に複雑化してしまったアルゴリズム(思考や行動)を、
あなたに最適化された、シンプルで実用的なものに組み直す。
それによって、同じ「あなたという端末」でも、もっと軽やかに日々を過ごせるようになる。
もちろん、土台である「端末」も大切です。
食事や運動による健康管理が整っていると、アプリもスムーズに動くようになります。
森田療法の場合
こころが重いとき、人はよく「このままではダメだ」「軽くなってから動こう」と考えがちです。
でも、森田療法では、感じ方にとらわれすぎずに、「いま、できること」に淡々と取り組むことを大切にします。
不安や緊張があっても、それを持ちながら動く。思考が重くても、その中でできる行動を選んでいく。
そうして一つひとつ目の前のことに手をつけていくうちに、気がつけば、「あなたという端末」にとって不要だったプログラムは自然と使われなくなり、必要な働きだけが残っていきます。
つまり、こころの最適化は、あらかじめ設計された修正ではなく、日々の行動の中で“自ずと”進んでいくプロセスなのです。
無理にプログラムを書き換える必要はありません。
その代わり、「使うものを使い、使わないものは放っておく」。
それだけで、端末はやがて、自分に合った軽やかな動きを取り戻していきます。
焦らず、今日できることから。
それが、こころの自然な回復力を引き出す、森田療法のアプローチです。
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