精神科を訪れる方々と日々向き合っていると、「今のままの生き方を変えたくない」という強い気持ちに触れることがあります。これは一見すると「頑固さ」とも感じられるのですが、よくよく話を聞いてみると、それまでの人生で培ってきた信念や価値観に深く根ざしたものだとわかります。
しかし、その生き方が偏っていたり、無理を重ねていたりすることで、心や体に不調があらわれていることも少なくありません。にもかかわらず、今までの生き方に固執し、「症状だけを取り除いてほしい」と願う方も多いのです。
不安や不眠、体調不良など、いわゆる「症状」は、「このままではいけない」という心と体からのサインでもあります。つまり、自分のあり方や日々の選択を見直すきっかけとして現れているのです。
もちろん、生き方を変えることには不安も伴います。けれども、ほんの少しでも視点を変えたり、新しい習慣を取り入れてみたりすることで、心の状態が驚くほど軽くなることがあります。神経症は、「生き方」に気づき、「少しずつ変える」ことで、自然と回復していくものだと私は考えています。
私は診察を、「これまでとは少し違った生き方」に気づくための時間として、大切にしています。そしてその過程を、患者さんと一緒に築いていくことが、私の役割だと思っています。
「このままでいいのかな?」と感じたときこそ、自分の生き方を見直すチャンスかもしれません。少しの勇気が、心を自由にし、回復への扉を開く鍵になるのです。
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