前回までの記事では、「自然の摂理に耳を澄ます」ということについて考えてきました。
これは、単なる考え方にとどまるものではありません。
私自身、医療の現場で多くの方と向き合う中で、「自然のリズムを無視した暮らし」が、心や体の不調を引き起こしている場面を何度も目にしてきました。
無理をして頑張りすぎてしまう人。
頭で考えすぎて、体の感覚に気づけなくなっている人。
不安や緊張に振り回され、眠れない、食べられない、動けない…。
そんなときに、薬やカウンセリングだけでは届かない「深い部分」にアプローチするには、
人間が本来もっている「自然との関係性」を回復することが、欠かせないのではないか。
そう感じるようになりました。
そこで私は、自分自身の実践や試行錯誤を通じて、
「自然に適応する力」を取り戻すことを目的とした方法を形にしてきました。
それが、私たちが取り組んでいる
「自然適応療法(しぜんてきおうりょうほう)」です。
この療法では、特別な道具や技術は用いません。
むしろ、すでに私たちの中にある感覚――
「感じる力」「動く力」「生きようとする力」を、自然の中で目覚めさせていくものです。
たとえば、
- 森や川辺を歩くことで、思考から離れ、感覚を取り戻すこと
- 静かな空間で呼吸や姿勢を整え、体の声に耳を傾けること
- 自然のリズムに合った食事や休息を心がけること
こうした小さな実践が、
やがて「自分自身と自然との関係」を再びつなげてくれます。
この療法は、特定の技法にこだわるものではありません。
自然の摂理に基づきながら、自分に合った方法を見つけていく「柔らかな道筋」です。
社会のなかで頑張ってきたけれど、どこかで息苦しさを感じている人にこそ、
「自然とつながる」ことの大切さを思い出してほしい。
そのための方法として、私たちはこの「自然適応療法」という名前を掲げることにしました。
今後の記事では、実際にどのようなことを行っているのか、日常生活の中でどのように取り入れられるかなど、少しずつ具体的にご紹介していきたいと思います。
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