名コーチではなく、先輩ランナーとして──私の森田療法実践記

仁泉堂医院

ある患者さんから、印象的なフィードバックをいただきました。

「前回は先生との距離が遠くて、見失ってしまうような感覚でした。どんどん先へ進んで、置いていかれるように感じました。」

その言葉に、私ははっとさせられ、深く反省しました。

ちょうど最近、私はトレイルランニングの練習会に参加し始めました。そこでは、日本有数のトレイルランナーがコーチを務めており、約20名ほどのチームで走っています。山道を走るトレイルでは、当然、参加者の体力によってペースに差が出ます。前方のランナーと後方のランナーの距離は大きく開きます。

そんな中、コーチはまず先頭を引っ張った後、後方に下がり、中盤や最後尾のメンバーの様子を見に来てくれます。そしてまた、先頭集団に追いついていく——その動きは、まさに理想的なサポートのあり方だと感じました。

森田療法における自分自身の姿を振り返ってみると、私はまだ、そのコーチのように自由自在に前後を行き来しながらサポートできるような「名手」ではないのだと思います。今の私は、必死に自分も登っている途中の、一人のランナーにすぎません。

この体験を通して、当院「仁泉堂医院」の在り方について考えさせられました。私たちは、日本一のコーチが率いる練習会というよりも、大学のサークル活動のような場所かもしれません。私はすべてを知り尽くした専門家ではなく、森田療法を少し先に経験している「先輩ランナー」くらいの存在です。

山道に例えれば、皆さんと同じトレイルを一緒に走る仲間。毎回、皆さんのところまで戻って励ますような力はまだありませんが、「道に迷わず、正しいコースにいるかどうか」には、いつも注意を払っています。

そう考えると、当院でのお支払いも、「指導料」ではなく「サークルの会費や参加費」に近いものとして捉えていただけるかもしれません。

私自身、これからも森田的な生き方をさらに深め、いずれは山を自由に上下しながら、多くの方をガイドできるような存在になりたいと思っています。

今回の患者さんの言葉のように、皆さんとの対話は、私自身の学びにもつながっています。森田療法に関心のある方々と、もっと多くの対話の場を持てることを楽しみにしています。

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