人はなぜ助言を受け入れるのか?

人間・社会

人は基本的に、自分の意志で行動したいものだと思います。例えば、公園で遊んでいる子どもが「まだ帰りたくない!」と駄々をこねる姿、学校指定のカバンを持つことに不満を抱く中学生の声、家電量販店で店員に商品の説明を受けると少し煩わしく感じる瞬間…。こうした場面に出くわすたびに、人は自分で選びたい生き物なのだと改めて思います。

医師として働く中でも、それを強く実感することがあります。予約した診察に来なかったり、処方された薬を自己判断で飲んだり飲まなかったりする患者さんを見ていると、「人間らしいな」と感じると同時に、時には戸惑うこともあります。

では、自分の意志で行動したい人が、素直に他人の助言や提案を受け入れるのはどんなときでしょうか?

それは、自分の力だけではどうにもならず、誰かの助けが必要だと感じたときではないでしょうか。そう考えると、親や教師、医師の言葉がすんなり心に届くことが少ないのも、ある意味で自然なことなのかもしれません。

私が行っている神経症治療は、「生き方を変える」治療です。そのため、「不安が強いから診察してほしい」「不安が和らいだから今日の診察はやめておく」といった、その時々の感情に左右される治療ではありません。不安の強さに関係なく、それを抱えながらも自分で行動を選び、生活を送る力を身につけることこそが、本当の治療だと考えています。

もちろん、差し迫った状況でなくても、他人の助言や提案を柔軟に受け入れられる人もいます。そういう人は、周囲からの支援を受けやすくなり、より多くのチャンスに恵まれるでしょう。森田正馬も、神経症治療において「素直であること」の大切さを説いています。

最終的には、他人のアドバイスを取り入れつつも、自分の意志で行動を決める。それが最も有益な生き方なのかもしれません。

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