苦しい人生の中で喜びを見出すために

森田療法

私は人生を根本的に苦しいものだと捉えています。人間は、いずれ訪れる死を避けられないことを知りつつも、それまで生きるために日々努力を続けなければなりません。この根源的な苦しみの中で、どうすれば喜びや楽しさを見出すことができるのでしょうか。

先日、脳出血のリハビリを経験された方がテレビ出演で「目標を持つことが大切」と語っていました。しかし、患者さんとの会話の中では「目標が見つからない」という言葉もよく耳にします。目標を設定することは確かに有効ですが、それ自体が難しい人にとっては負担となる場合もあります。そこで私は、「目標」という言葉を「区切り」と言い換えることで、この難しさを乗り越えられるのではないかと考えました。

マラソンでの経験:区切りが生む力

例えば、私がマラソンを走った際の経験です。40km地点手前で「もう走れない、歩きたい」と思ったことがありました。その時、「とりあえず40km地点までは走ろう」と足を動かしました。そして40km地点に到達した瞬間、「なんとかなりそうだ」と思えるようになり、そのままゴールまで走り続けることができました。

この経験は、目標そのものではなく、区切りを意識することの力を教えてくれました。ゴールが遠く感じられる時でも、「次の◯km地点まで」と小さな区切りに注目することで、一歩一歩前に進むことができます。そして、その区切りを超えた時に新たなエネルギーが湧き出し、次へと進む力になります。

区切りの特徴と可能性

目標と区切りの違いを考えると、区切りは「今ここですぐに行動を持って作ることができる」という点が特徴的です。目標は計画を立てたり未来を見据えたりする必要がありますが、区切りはその場で行動することで自然に生まれます。例えば、散歩に出るなら「次の角を曲がるまで」、仕事であれば「10分間作業してみる」といった具合に、小さな区切りをどんどん作ることができます。

さらに区切りを増やせば、その都度小さな達成感や喜びを得ることができ、結果的に苦しみを分散させる効果が期待できます。人生が本質的に苦しいものだとしても、区切りを通して束の間の楽しさを繰り返し味わうことで、日々をより充実させることができるのではないでしょうか。

動くことで区切りが生まれる

重要なのは、区切りは行動することでしか生まれないということです。「動けない」「何をしていいかわからない」と感じる時ほど、考えすぎるのをやめ、「とりあえず動いてみる」ことが効果的です。行動することで、そこに自然と区切りが生まれ、次へのエネルギーを得ることができます。このプロセスは、森田療法の「行動本位」の考え方にも通じます。

終わりに

人生の苦しさに圧倒されそうになる時でも、小さな区切りを見つけ、それを超えていくことで、新たな喜びや楽しさを感じられる瞬間があります。目標を見つけることが難しい時も、とりあえず一歩を踏み出し、区切りを作ることで道が開けるかもしれません。

「とりあえず動く」というシンプルな行動の中に、苦しみを乗り越えるための鍵が隠れているのだと思います。あなたの人生の中でも、ぜひ区切りを意識してみてください。そしてその区切りを増やし、小さな喜びを積み重ねることで、苦しみの中にも彩りを添えていきましょう。

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