孤独感の正体とは?患者さんとの対話から考える

仁泉堂医院

患者さんとの対話から生まれた「孤独感」についての考察

患者さんとの対話の中で浮かび上がった「孤独感」についての悩み。ある患者さんが、「できれば人と一緒にいたくないが、それでも孤独感が強まってしまう」という気持ちを抱えていました。この感覚は、多くの人が共感できる複雑な心の葛藤の一つかもしれません。

その対話の中で、私は「患者さんが私との対話を通して、私の言葉を自分なりに受け止め、それを自分独自の考えや行動として表現してくれた時に、私の孤独感が和らぐことがあります」とお伝えしました。しかし、患者さんからは「まだその感覚がわからない。相手にわかってほしい気持ちはあるが、どうしてもわかってくれないという感情ばかりが生じてしまう」との返答がありました。

「孤独」とは何か

この対話を通して浮かび上がったのは、「自分が今ここにいる意味を感じられないことが、孤独なのではないか」という問いでした。誰かに影響を与えられたときに初めて、自分が存在する意味を感じられるのではないかという視点です。

ここで興味深いのは、「影響を与える相手が必ずしも人間である必要はない」という考えです。動物や植物、さらには物や自然環境に対して影響を与えることでも、人は孤独感を和らげることができるのではないかという議論に発展しました。例えば、ペットを飼うことや、庭の植物を世話すること、さらには何か物を作り出すことも、自分の存在を認識するための手段となり得るかもしれません。

創作活動と孤独感の関係

さらに話を進めていくと、芸術家や作曲家の創作活動も、孤独感を和らげる手段の一つである可能性に思い至りました。彼らは、自分の内面を作品に投影し、その作品が誰かに影響を与えることを通して、存在意義を感じているのかもしれません。例としてナスカの地上絵が挙げられました。大地に巨大な絵を描くことで、当時の人々は何かしらの影響を外の世界に与え、それによって孤独感を和らげていたのではないか、と考えることもできます。

患者さんとの対話から得た気づき

こういった患者さんとの対話は、私にとって新たな気づきの源泉となっています。孤独感は単なる「一人でいる」という状況ではなく、「自分がいる意味」を見いだせるかどうかに関わっているのかもしれません。そして、その「意味」を見つけるための方法は、人それぞれに異なるのでしょう。誰かと交流することもあれば、自然や芸術を通じて自分を表現することも、その一つの手段と言えます。

孤独感に向き合うためには、自分が影響を与えることができる対象を見つけることが重要なのかもしれません。そして、その対象が必ずしも他者である必要はなく、自然や物との関わりでも良いという視点は、新たな孤独感の捉え方として、多くの人の心に響くのではないでしょうか。

このような対話を通して、私自身もまた新たな視点を得ていることを感じます。

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